Virginia Lee Burton

Winner of the 1943 Caldecott Medal.

The Little House  Copyright © 1942 by Virginia Lee Burton

 

 

『 ちいさいおうち ( 岩波の子どもの本 ) 』 

バージニア・リー・バートン : 文・絵 石井桃子 : 訳 

岩波書店 640 yen (+ tax)

 


むかしむかし、ずっといなかの しずかなところに
ちいさいおうちが ありました。
それは、ちいさい きれいなうちでした。

 

 

空色の表紙に描かれた一軒のちいさいおうちがこのおはなしの主人公。お日さまが輝き、鳥たちが飛び交い、木々の緑は美しく、豊かな自然に囲まれた、ずっといなかのしずかなところで、ちいさいおうちは、のんびりと季節の移り変わりを楽しんでいました。

 

子どもの頃から大すきな作品で、ウォルト・ディズニーによる短編アニメーションもよく見ました。おうちはずっと同じ場所にいるはずなのに、時間の流れとともに周りの景色がどんどん変わっていく。高層ビルの建ち並ぶような街あかりのそばでは、空が曇っていて、星がかがやいてみえない。いつだって同じようにあわただしく過ぎる日々の中では、季節の移り変りさえも感じられない。ピカピカだった窓だって、傷付いて、割られてしまう。さみしそうな表情になっていくおうちがかわいそうで、都市の発展は素晴らしいことだけれど必ずしも良いことばかりではないのだと幼心に感じたものです。

 

長い年月が過ぎ、ちいさいおうちのまわりを、車が走る様になります。辺りいっぺんにビルが建ち並ぶ頃には、おうちもすっかり煤まみれ。遠く街のあかりに思いを馳せていた頃を思い出しては、ずっといなかのしずかなところが恋しくなります。 

 

それでも、最後にはハッピーエンドが待っています。ある人の “ the great-great-granddaughter” が通り掛かりに、ちいさな頃にきいたことのあるちいさいおうちのおはなしを思い出して...。現実はそんなに甘くないのだという方もいますが、ちいさな子どもたちのおはなしの結末には、なるべく可能性があってほしいと願います。良識とともに、もしも、失敗してもくじけそうになってもあきらめなければ上手くいく。きちんとしていれば、幸せになれるんだよ、大丈夫だよ、と伝えることが出来るといいなと思います。ストーリーはもちろん、頁を飾るイラストも色褪せずおすすめの1冊です。
 
 
バージニア・リー・バートン / Virginia Lee Burton (1909-1968)
アメリカ・マサチューセッツ州生まれ。イラストレーター。絵本作家。サンフランシスコにある The California School of Fine Arts で絵画を学ぶ。卒業後、The Boston Museum School でGeorge Demetrios と出会う。1937年に絵本作家デビュー。初めての作品は『 Jonnifer Lint 』(未訳)1943年『 ちいさいおうち 』 The Little House,1942(岩波書店) コールデコット賞受賞。
主な作品 『 いたずらきかんしゃちゅうちゅう 』Choo Choo. 1937(福音館書店)『 マイク・マリガンとスチーム・ショベル 』Mike Mulligan and His Steam Shovel. 1939(童話館出版)他
   
 

 


 

『 Dragons Love Tacos 』

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